SAP HANAとは何か?インメモリデータベースの特徴と機能・導入メリット徹底解説

SAP HANAとは?
SAP HANAとは、Linux上で動作するシステムであり、大量のデータを高速処理するSAP製品です。
SAP HANAには、SAP Business Suite 4 SAP HANA(S/4HANA)やSAP Business Suite powered by SAP HANA(SoH)と呼ばれる製品があり、SAP ERPを含め、高速化を可能にします。
たとえば、次のような場合、SAP HANAの本領が発揮されます。
- データ量が増えて表示が遅くなった
- リアルタイムで分析レポートが見られない
- DBアクセスへの時間が大幅に増え、バッチ処理に時間がかかるようになった
必ずしもSAP HANAで解決できるものではありませんが、SAP HANAはSAP ERPを含め、さまざまな処理の高速化を実現できる製品です。
今までのSAPでは動作が遅くなることも多々ありましたが、SAP HANAではスムーズに動作するよう設計されています。
SAP HANAの特徴・アーキテクチャ
SAP HANAのアーキテクチャには特徴があります。SAP HANAの特徴や構成を正しく理解し、SAP HANAを使っていくといいでしょう。
特徴
SAP HANAには、次のような特徴があります。
- インメモリデータベース
- 互換性と汎用性
- 拡張性やデータ連係
- 経済性
インメモリデータベースについては後述しますが、最初に目をつけるべきは「互換性」の部分でしょう。SAP HANAはANSI SQLに準拠しているため、ANSI SQLベースで稼働していたシステムを、SAP HANAで利用可能になっています。
また拡張性やデータ連係も見逃せません。特に拡張性は、昨今のクラウド型サービス需要が高まるとともに重要になってきています。スケールアップやスモールアウトもでき、需要によって「どれほど拡張するのか」決められます。
ほかにも、経済性の観点からSAP HANAには特徴があり、従来必須となっていたチューニングを必要とせず、汎用性の高いIAサーバーであるため、SAP HANAやサーバーの運用コスト削減につながっています。
インメモリデータベースとは
インメモリデータベースとは、従来HDDやSSD上で行われていた読み書きを、RAM(メモリ)上で行うシステムのことです。RAMのリード/ライト性能は、HDDやSSDを凌駕しているため、より高速なデータ処理が可能です。
昨今では、NVMe接続のM.2 SSDも出てきていますが、コストが高いうえRAMと比べてリード/ライト性能は劣ってしまいます。そのため、インメモリデータベースでRAMを利用することは運用や導入コストを抑えられるだけでなく、高速化にも貢献しています。
製品構成
SAP HANAはLinux上で動作するシステムです。そのため、本格的なサービスは仮想マシン環境で動作させる場合を除き、WindowsやMacのデスクトップやノートPCでは動かせません。
SAP HANAをLinux上に展開させ動作確認を済ませれば、単体の機能でなく複数の機能を同時に利用でき、多数のアナリティクスやデータのトランザクション処理も可能です。
SAP HANAの特徴的な機能
SAP HANAの中でも特徴的な機能が、DBファイルの肥大化防止です。SAP HANAの真骨頂でもあり、従来の製品とは大きく違う特徴的な点として挙げられます。
またSAP HANAは2025年問題にも対応しています。SAP ERP製品は、2025年に保守サポートの期限を迎えますが、SAP HANAをデータベースとしたSAP S/4HANAは、2025年以降も使い続けられます。SAP ERPを使っていると避けて通れない問題も、SAP HANAは解決が可能です。
特にDBファイルの肥大化は、いくらSAP HANAがインメモリデータベースであっても好ましい現象ではありません。多くのデータを扱わなければならない製品と、少量のデータで同じ処理をこなせるSAP HANAでは、どちらが高速な処理をできるかは明白でしょう。さらには、インメモリデータベースを活用することで、低コストながらより高速な処理を実現しているため、クラウドサービス上でも展開しやすくなっています。
SAP HANAを導入するメリット
企業がSAP HANAを導入することでどのようなメリットをもたらすのでしょう。最後に、SAP HANAを導入することで得られるメリットを解説します。
経営スピードアップ
SAP HANAを導入することで、経営のスピードアップにつながります。
SAP HANAはほかの製品と比べ高速に処理でき、かつリアルタイムで分析レポートを見ることが可能です。つまり、従来よりも時間をかけずに処理できるため、経営スピードは自然にアップします。
ITシステムの全体最適化
ITシステム全体を最適化するのにも、SAP HANAは多くのメリットを持っています。たとえば、先にも挙げている高速化です。何もHANAに限った話でなく、別のシステムでも構成をM.2 SSDにしておけば、ある程度までは高速化を実現できます。SAP HANAはインメモリデータベースを利用するため、M.2 SSDで構成した場合よりもさらに有利な動作が可能です。
また、データベースが肥大化しないのもITシステムを運用するにあたって大きなメリットです。データベースが肥大化すると、同じシステムを使っていても、データの参照が低速化しやすくなります。必要なデータベースの削除はできないため、HANAでほかの製品より利用するデータベース量が少ないのであれば、SAP HANAと連携しているシステム全体が最適化されることになります。