SAP社のERP徹底解説!代表製品・モジュール・他社との違い

SAP社のERPは単一製品ではありません。ERPを扱う複数の製品があり、総称してSAP ERPと呼ばれています。代表的な製品もあれば、中には採用数が非常に少ないERP製品もあり、製品ごとに特色あるものに仕上がっています。
この記事では、SAP社のERP製品における代表製品と他社との違い、またモジュールについて徹底解説します。
SAP社のERP徹底解説!他社ERPとは何が違うのか?
ERPを展開しているのは、何もSAP社だけではありません。複数あるERP製品を出している事業者の中で、有名なもののひとつにすぎないのです。またSAP社のERPをベースにしていても、製品ごとに特色を出し、異なる製品として売られているケースもあります。
たとえば、SAP社のERP製品の代表的な製品として、次のような5つの製品があります。
- SAP ERP
- SAP S/4HANA
- SAP S/4HANA Cloud
- SAP Business One
- SAP Business ByDesign
SAP ERPはSAP社のERPです。一方、SAP S/4HANAとSAP S4/HANA Cloudは、SAP ERPとSAP R/3の後継製品として販売されたものです。
ベースはSAP ERPですが、インメモリデータベースを採用したSAP HANAをデータベースとして利用することで、SAP ERPよりも高速に動作します。
SAP Business Oneは、中小企業向けにSAP社が買収をしたサービスで、ERPの導入が遅れていた中小企業向けに作られている特徴があります。そしてSAP Business ByDesign。これはSAP社のSAP Cloud Platformをベースに作られているものです。
そのため、SaaS型のERPサービスの中でも、クラウド型ERPとして運用するため、導入までの時間が短くて済む利点を引き継いでいます。
SAP社のERP製品まとめ
主要製品
SAP社にもERP製品は複数存在しており、代表的な製品も業界では決まっています。
ここではSAPが開発・提供するERPの主要製品をまとめていきます
SAP社のERP製品として主要な製品は、先にも述べたとおり次の5つです。
- SAP ERP
- SAP S/4HANA
- SAP S/4HANA Cloud
- SAP Business One
- SAP Business ByDesign
これらSAP社のERPは「販売」「生産」「在庫」「会計」を“一元管理できる”ERPであり、企業の資産である「人・金・モノ」を効率的に運用できるシステムになっています。
他社ERP製品では「販売」「生産」「在庫」「会計」が“一元管理できない”ものも存在します。その場合は、バッチ処理に手間もかかったりデータの二重入力が発生したりして、企業資産となる「人・金・モノ」の効率的な運用を妨げている企業も少なくありません。
SAP社のERPである、SAP ERP、SAP S4HANA(Cloud)、SAP Business One、SAP Business By Designといった主要製品は、「販売」「生産」「在庫」「会計」を一元管理できるため、バッチ処理も容易です。そのため、企業ごとに最適化した動作をさせやすくなっています。
SAP社ERPの代表的モジュール
SAP社のERPが持つ代表的なモジュールは、次の4つです。
- 会計モジュール
- 人事モジュール
- ロジスティックモジュール
- その他・分析系モジュール
会計モジュールは会計伝票の入力から総勘定元帳、財務諸表の作成といった簿記の一連のプロセスに対応したモジュールです。モジュールは大きく分けてFI(財務会計)とCOや(管理会計)の2つで構成されています。
人事モジュールは人的資源の最適化を図るために必要な機能を提供するモジュールです。ロジスティックモジュールは販売系管理を行うモジュールです。販売や在庫管理ができます。
そして、その他の分類や分析系モジュールは、分析とその他管理システム、プロジェクトの管理や生産管理、またプラント保全とそれに伴う分析もできます。
他社ERP製品との違い
では、SAP社のERP製品と他社のERP製品では、なにが違うのでしょう。他社のERP製品だと、オラクル社やワークスアプリケーション社など、大手企業が参入している業界ですが、SAP社のERP製品とは大きな違いがあります。それは、「データ連係のしやすさ」です。
SAP社のERP製品は、データ連係が非常にしやすく、業務を遂行するにあたっても、またデータを管理するにあたっても矛盾(バグ)を生じにくく、一元管理が容易になっています。
他社ERP製品では、「販売」「生産」「在庫」「会計」分野でデータが分かれ、バッチ処理しないと一元管理できないものも存在します。そのため『データ統合の有無』がSAP社のERPと他社ERP製品との大きな違いになっています。
当然のことながら、業務をスムーズに進行するためには、SAP社のERPを使った方が簡単です。他社製品だと必要になるバッチ処理時のバグにも遭遇しにくくなるため、管理も容易になります。
SAP社ERPを選ぶメリットとは
SAP社のERPを選ぶメリットは、次の2点が大きいでしょう。
- グローバルでの圧倒的シェア
- コスト削減につながる
まず、SAP社のERPは、他社のERPと比べても圧倒的なシェアを誇っており、SAP ERPをベースとした複数の製品も出ています。そのため、他社のERPを使っていると仮に「サービス終了」となってしまった場合、簡単な移行先がなかなか見つからず混乱を引き起こします。
しかし、世界でも圧倒的シェアを誇るSAP社のERPを選んでおけば、そのような心配とは無縁となります。
また、コスト削減効果も見逃せません。SAP社のERPでは、「販売」「生産」「在庫」「会計」を一元管理できるため、運用が容易になります。
ですが、それぞれのシステムが独立している他社のERPだと、運用に時間を要します。動作させるサーバー(PC)の性能も求められるため、SAP社のERPを採用することで、人件費や設備費など、さまざまなコストを削減できます。
SAPユーザーに迫る2025年問題とは?
他社ERP製品に比べてメリットも多いSAP社のERPですが、2025年問題というものも抱えています。SAP社のERP、中でもSAP ERPは2025年にサポートの期限を迎えてしまいます。Windows XPやWindows 7のPCのサポート期限問題と似ている部分です。
保守サポートの期限が過ぎても使い続けることはできますが、もし企業のデータを狙ったハッカーに好都合なぜい弱性が見つかったとしても、サポートされることがないため、新しい製品に乗り換える必要があります。
SAPユーザーは、2025年問題に対処すべく、SAP S/4HANAへシステムを切り替えるか、ERPの利用自体を辞めてしまうか、選択を迫られるのです。確かに前述のとおり、2025年以降も今までのSAP ERPを使い続けることは可能です。
しかし、企業の生命線とも言えるデータを管理させているため、万が一ぜい弱性が見つかりデータの流出が起こってしまえば大問題となってしまいます。
Windowsのパソコンでも企業は大きな対応を迫られました。それと同様に、SAP ERPでもSAP S/4HANAに切り替えるのか、ERP利用を辞めるのか、2025年までに判断を下し、システムの見直しや入れ替えを済ませておく必要があるのです。